事情のぶつかり合いの中で
今、試作のための図面作成に追われています。
先日、なんとか勝ち取って実施できることになった試作です。
(関連記事:
「試作できる喜び」)
商品化できるかどうか決める重要な試作になるので、
図面が一度完成しても納得いかずまた修正の繰り返しです。
部品ごとの図面が完成し、上司の承認をもらえば、
完成したものから順番に自社工場あるいは外注に製作を
依頼していきます。
数日前に部品製作を依頼したある部品業者の社長との間で、
息の詰まるような駆け引きをすることになってしまいました。
この業者の社長にはこれまでにも何度か試作でお世話になったことがあり、
細かに説明しなくても把握してくれるし、融通を利かせてくれることも
多かったです。
しかし、今回は違いました。
社長から電話があり、聞いていたより加工が複雑で、
先日決めた見積額では収まらないとのこと。
社長から今回の試作費用はあらかじめ見積をいただいていました。
私としては、今までと変わらない程度の試作内容だと思っていたので、
その旨を電話で伝え、試作全体の概要を文書FAXして依頼しました。
社長も、これまでの試作と同程度と把握したため、見積は口頭で
20万円とあっさり返事をくれました。
いつものように20万円であれば全体の予算からしても
ギリギリなんとかなりそうだと私は安心しました。
そして、そのまま試作に取り掛かってもらったところ
話が違うじゃないかということです。
すべての図面がちゃんと完成してから、きっちり見積をとっておけば
こういう事態は起こらなかったんですが、今回はそれをしていると
大幅に試作完成が遅れそうだったこともあり、あえて大雑把に
いったのが裏目に出ました。
しかしながら、私としても、この業者での試作は20万円と思って
全体の試作予算を調整していたので今更20万円では無理で、
少なくとも25万は必要だと言われて非常に困ってしまいました。
当社も試作の予算についてもかなり絞られてしまっているため、
簡単に融通がつかないことが脳裏にありました。
私は社長に対して電話で、今回は商品化のための重要な試作なので
なんとかなりませんかとお願いしても、20万円のままでは
受けられないと強く拒否されてしまいました。
なんだ!初めて依頼した業者じゃないんだし、これだけ
お願いしているんだからいいじゃないか!
社長の頭の固さに私は内心少しムッとしてしまいました。
どう考えても状況が変わりそうもなかったので、こちらもなんとか
検討してまた連絡しますと伝え一旦電話を切りました。
それにしてもどうしよう・・・
試作の内容を削るという選択肢も考えましたが、
商品化できるかどうかの試作なのでそれはなんとしても
避けたい気持ちがありました。
かなり悩んで、自社工場だと試作とはいえ自社製品なので
なんとかしてもらえるかもと思い、早速製造部の部長に
事情を説明し製作を20万円以内で請け負ってもらうために
お願いに行きました。
しかし急なことでしかも短納期ということもあり、
金額云々の話をする前にあっさり突っ返されました。
他の業者という手も考えましたが、この業者ほど低価格で
しかもそこそこの品質で請け負ってくれるところは
他には考えられなかったんです。
やはり、この試作全体の予算を増やしてもらうしか選択肢が
残されていないという結論にたどり着きました。
このときには、先ほど業者との電話でムッとした気持ちも冷めていました。
冷静になって私が社長の立場だったらどう思うだろうって考えてみました。
社長があそこまでかたくなに拒否したのは、量産化されるかどうか
不透明なうえに自分のところで量産した後請け負えるのか
定かではない商品の試作の仕事を、赤字で請け負って従業員に
しんどい思いをさせるわけにはいかないという社長としての
プライドもあったんじゃないかと。
決してこの試作で儲けようなどとは思っていなかったと思います。
ただ、赤字にならない費用は払ってほしい、それに尽きると思います。
私は決心して自分の上司に試作予算を増やしてもらうための
交渉に向かいました。
厳しい予算配分の中で、上司は難しい顔をしてしばらく
考え込んでいる様子でした。
しかし、業者の立場を踏まえて今の状況を必死の思いで伝えたところ、
最終的には上司は理解してくれてなんとか試作予算を増やしてくれたんです。
20万円から25万円に増やしてもらえました。
再び、社長に電話しました。
「社内で交渉してなんとか5万円追加することができましたが、
これでいかがでしょうか。」
社長はこう答えました。
「25万円でしたら、量産時のことは関係なく、試作として
請けさせていただきます。いろいろとありがとうございました。
商品化頑張ってください。」
やっと快諾してもらえたんです!
社長の言葉から、私が必死で5万円増やした状況を察してくれて
いたように思いました。
かなり疲れ果てて、涙が出そうな複雑な気持ちでした。
上司の事情、業者の事情、そして私の事情。
それぞれの事情のぶつかり合いだったのかもしれない。
私も苦しかったけど、上司も、業者も苦しかったと思います。
しかし、この苦しみから、最も良い形で落ち着いたんじゃないかと
いう気がします。
逆に、この苦しみがなければ、それぞれの抱えている事情を
理解し合えることもなかった。
長い一日でした。
なんとか試作は止まることなくまた完成に向けて進み出したしだいです。
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2005年11月10日 開発日誌 トラックバック:0 コメント:5